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隣の風花坂高校に通う友人は、陸上部のマネージャーとして毎日がんばる明るい女の子。そんな彼女がエースの風間往路先輩に恋をした。
風花坂高校陸上部は、高校生駅伝で毎年優勝候補に挙げられる強豪校だ。特にエースの活躍はめざましく、『風花坂の魔王』という二つ名をメディアがつけるほどである。誰かさんのように自称ではない。
「バカモノ。俺だって自称ではないぞ」
はいはい、先を続けます。
彼女は二日前、決意の末に思いを一通の手紙に託した。翌日、魔王先輩は彼女の靴箱に大きめの封筒を入れた。中から出てきたのが鉛筆画というわけだ。
「一枚の便箋と一本の消しゴム付き鉛筆も一緒に入っていました。これが便箋です」
「ふん、『先日の大会で満足のいかない結果に終わった僕に、暖かい言葉をかけてくれたこと、感謝しております。転倒程度で失速するとは僕もまだまだです。痛い敗退でした。県対抗学生選抜駅伝で二区を走れないのは悔しいですが、気持ちを切り替え、来期は転んでも変わらぬ実力を発揮できるよう、より練習に励みます。おつきあいに関しましては、スケッチを返事として、かえさせていただきます。同封の鉛筆で手を加えてくだされば、おわかりいただけるかと思います。』か。めんどくさい男だな」
お前が言うなと思ったけれど、私も同じ意見。イエスかノーかハッキリと伝えてくれれば、友人が悩むことも、私が先輩と不愉快な放課後をすごすこともなかったのだ。
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