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「それで、どういうお返しを贈れば良いか悩んでいる、と」
きゅうっと小さく縮こまると、まるで子リスのようです。ああ、初々しいですね。私もあの人も、かつてはこのような時代があったのでしょう。相手の好みもまだわからなくて、どうやったら喜んでもらえるのか、少しでも笑顔になってもらうにはどうしたら良いのか……考えすぎてすれ違って、近づこうと思ったら離れていって、もどかしいったらないんです。それもまあ、月日が経てば相手の呼吸すら自分のもののようになりますし、何が欲しいだとか、今こうしたいとか、察する前にふてぶてしいほど直接要求を伝えてくるようになるものです。可愛げがないと言ったら……
おっと、またもや話が逸れてしまいました。姫井先生もまた一人で思考のループにはまってしまっているようです。
「お相手の方にもよるとは思いますが……」
私は少し迷って続けます。
「姫井先生が、お相手のことを想って一生懸命選んだものであれば、きっと何であれ喜んでもらえると思いますよ。ええ、ありきたりな答えではありますがね」
姫井先生もそう思ったのでしょう。力なく微笑んで頷きました。
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