溶けないで

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

溶けないで

雪というには、余りにも暖かい。 雨というには、余りにも優しい。 霙というには、余りにも、私の心に、残る。 では、どう表現したらいいんだろう。 言葉なんかで語ってはいけない気がする。 吹雪ほどの強さもないし、 俄雪というには、少しずれている気がする。 きっと、初雪、という言葉が一番近い。 少し儚くて、でも心には万年雪として永遠に積もり続ける雪。 私の、初めての恋、だから。 瀬戸内海側では、全く雪が降らない。 たまにほんの少しだけちらついてたりするけど、積もることはなかった。 だから、雪に対して憧れを持っていた。 転校生は雪なんて降らないほうが絶対いいよ、とかいうけど。 ちょっとくらいは、積もってくれてもいいのに。 わたしは、学校から帰るとすぐに寝る。 そして、十時くらいに起き、勉強とかで暇を潰す。 今、3時。 この時刻の空気が一番好き。 ココアを持って、ベランダから眺める。 あ。 雪。 ほんの少しだけ、雪が降っていた。 外は凍えるように寒い。 でも、何だか暖かい。 彼女は、初雪のように、私に強い感情を持たせてくる。 雪が好きで、でも本物の雪は知らない、私のように。 でも、心に、どんどん積もっていって、いつしか消えない、万年雪として残る。 私は余りにも好きで、好きで、消したくなかった。 ベランダの手すりに積もった雪。 集めて、冷凍庫に入れる。 私の初雪も、永遠に保存できればいいのに。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!