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「だから、これは贖罪だ」
僕はそれを前に呟く。そして跪いた。彼女を模したそのロボットの前にーー
当時のテクノロジーはお粗末なもので、僕は再現のためにあらゆる研究をするはめになった。ここまで、本当に長い道のりだったのだ。
「嗚呼」
さあ、彼女に再び命を灯そう。僕が消してしまった灯。それが今度は僕の手で灯るのだ。
あの日。僕の前を去ろうとした彼女を、僕は近くにあった電気ノコギリで殺してしまった。バラバラに切り刻み、姿を変えてしまった。
正気に戻った僕は、それを丁寧に拾い集め、そして総てを機械に置き換えた。
「これで、君はもう僕のモノだ」
狂った眼差しで愛おしいその人の偽物を見つめる。そして、床に置いたパソコンから、起動する信号を送った。
「ーー」
「ーー」
目が合った。ロボットである彼女が、真っ直ぐに僕を見つめてくる。
「あなた、同じじゃないのね」
「えっ?」
彼女が真っ先に放った言葉に、僕は驚いた。そして、滑らかに動く彼女を凝視し続ける。
その彼女が手に取ったのは、あの電気ノコギリーー
「あなたも、機械仕掛けになればいい」
「ーー嗚呼」
僕は、完全を目指し過ぎたらしい。彼女の脳まで、完璧にコピーしてしまったのだ。
目の前が真っ暗になる。そして、僕が機械として蘇ることは、当然なかったのだった。
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