1

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「だから、これは贖罪だ」 僕はそれを前に呟く。そして跪いた。彼女を模したそのロボットの前にーー 当時のテクノロジーはお粗末なもので、僕は再現のためにあらゆる研究をするはめになった。ここまで、本当に長い道のりだったのだ。 「嗚呼」 さあ、彼女に再び命を灯そう。僕が消してしまった灯。それが今度は僕の手で灯るのだ。 あの日。僕の前を去ろうとした彼女を、僕は近くにあった電気ノコギリで殺してしまった。バラバラに切り刻み、姿を変えてしまった。 正気に戻った僕は、それを丁寧に拾い集め、そして総てを機械に置き換えた。 「これで、君はもう僕のモノだ」 狂った眼差しで愛おしいその人の偽物を見つめる。そして、床に置いたパソコンから、起動する信号を送った。 「ーー」 「ーー」 目が合った。ロボットである彼女が、真っ直ぐに僕を見つめてくる。 「あなた、同じじゃないのね」 「えっ?」 彼女が真っ先に放った言葉に、僕は驚いた。そして、滑らかに動く彼女を凝視し続ける。 その彼女が手に取ったのは、あの電気ノコギリーー 「あなたも、機械仕掛けになればいい」 「ーー嗚呼」 僕は、完全を目指し過ぎたらしい。彼女の脳まで、完璧にコピーしてしまったのだ。 目の前が真っ暗になる。そして、僕が機械として蘇ることは、当然なかったのだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加