Ⅱ章 西君が語るいくつかのこと

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だから今こんなにも僕が不確かなのは、ミナミを案じるからではない。 僕にとっての現実は、単にここにミナミがいないという事実だけだった。それ以上でも以下でもない。 僕は深く悼む。 ミナミをではなくて、ミナミを失った僕自身を。 ミナミから解き放たれた僕自身を、深く、深く悼む。 眠りにつこうと目を閉じているが僕の瞼の重みは正しくない。部屋の暗闇の色がやさし過ぎる。 夜が引いていけば、自分が自然に微笑むことができると僕は感じる。それは直感よりも確かなものだ。 望むと望まないとに関わらず、僕は解き放たれたのだ。ミナミの手で、ミナミから。 ミナミの行動力に取り残されるのはいつも僕だ、と可笑しくなる。 そうして眠りにつく。これまでなかったような、穏やかで、やさしい眠りに。  「言ったとおりだろ」 得意げなミナミの声が響いたような気がし、やがて僕は静かな闇に満たされる。
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