今日は特別な日だ

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 今日は特別な日だ。  私の子として産まれてくれてありがとう。この世で一番最初に君に贈るもの。  それは私と由美が君の人生に相応しいようにと考えた名前だよ。 「愛」この名を君は気に入ってくれるかな。  人に愛されて、人に愛を与えられて、愛に満ちた、そんな人生を送って欲しくて君に贈るよ。  私にとっては二人目の家族。私には親も兄弟もいないから、由美……君のお母さんと君だけが僕の家族です。    本当に産まれてきてくれてありがとう。  新米のパパは明日から、もっと懸命に生きるよ。君にとって恥ずかしくないパパでいられるようにね。  私はその冊子を閉じた。涙が止まらない。 「愛ーっ。ちょっと来てー」  階下で母が呼んでいる。 「どうかした?」   母の所へ行くと小さな包みを手渡された。 「なあに、これ?」  開けて見ると、銀のハート型のロケットが入っていた。 「それはね。パパが貴女が巣立っていく時に持たせるんだといって買ってきた物なの。  まだ、二つの誕生日を迎えたばかりのあなたにね」  パパのプレゼント!  また、涙が溢れだした。  パパ!私は愛に満ちているよ。 「パパも明日の式は見ていてくれるはずだわ。いつも、あなたの事を一番に考える人だったから」 「うん。今もね、パパの日記読んでたの」 「あら、またなの?」 「だって、パパがいるんだもん。あの中に」  実際に私はパパの思い出は幼い時の頃しかない。早くにパパは昇っていってしまったから。 「ママは寂しくなかった?」 「いいえ。私には愛がいるから。  それにいつも私たちの傍にいてくれているのは分かっているもの」  私は頷いた。  傍にいてくれている……私も感じていた。  ふと寂しくなった時にはいつも感じる。愛らしい猫だったり、庭に来る綺麗な小鳥だったり、いつも父が姿を変えて来てくれていた。パパ、私は知っているのよ。 「パパはね。愛が初めての誕生日を迎えた時に私に謝ったの」 「えっ?なんて?」 「『僕は君を愛している。そして愛も愛している。君と結婚する時、ずっと一番愛すると約束した。ごめん、君と同じくらい愛も愛しているんだ』って」 「なにそれ!?」 「でしょ!?私は言ったわ『同じくらいなら許すわ』って。二番目に落ちたら愛に嫉妬したかもね」  そういって母は笑った。  
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