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オランジュショコラ
「じゃあ、次はもっと美味しいの頂戴。」
「…え?」
「何、くれないの?」
「だって、こんなまずいの食べさせたのに…」
"また食べてもらうなんて出来ないよ。"
聞こえるかどうかというほどの小さな声で呟く君の頭を優しく撫でる。
「俺が食べたいの!それにさ、こういうのも思い出の一つになるから俺は好きだよ。」
「まずくても?」
「引きずるなー。失敗だって二人で笑い合えたら楽しいだろ?取り返しのつかない事だったら楽しむことも出来ないだろうけど...こういうのは幾らだって笑顔に変えられるんだから。」
まだ納得がいかないような表情を浮かべる。
「もー、そんな顔しないの。これから出来るようになれば良いんだし、その過程の分だって二人の思い出になると思うんだけどー?」
同意を求めるように、両手で君の頬を挟みほぐしながら問いかけると「うー。」と口を尖らせる。
その顔が何だか面白くて笑うと君も、ふっとため息交じりの笑みを浮かべる。
「分かった。ん、まずいのはもう作らないように頑張る!」
両手を握り意気込む姿にまた一つ甘い気持ちが募る。
「だから、それはもう食べないで。」
残っているオランジュショコラに手を伸ばそうとしたら止められた。
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