嫌いだけど好きかもしれない。

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 腕組みをして仁王立ちの私はさぞこの空間には不釣り合いだろう。 さて、どの気合いが入ったチョコレートにしようかな、と眼球だけを右から左へとゆっくりスライドさせてショーケースの中を品定めしていく。  おっと、邪魔でしたか――と、右隣りにぶつかってしまった人を見て、私は驚いた。 何故ならその人は、スーツにコートの男性だったからである。 「……マジか」 「よ」  軽く挨拶してきたそいつは、奇遇にも会社の同僚だった。 「お前彼氏いたっけ」 「あんたこそ彼氏いたっけ」  軽口を叩き合える相手なので私も言い返す。  こいつとは同期で、仲は良くも悪くもない――普通? というやつだ。 「私はチョコが好きなだけ。バレンタインは嫌い」
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