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ひたすら食と酒が進むヴェスカは、そこまで気にする事なのかと思った。彼もかなり酒を飲んでいるが、あまり酔いが回らないタイプなのかいつもと変化は感じられない。
ファブロスは刺激のある酒を飲みたがらないのか、全く手を付けていなかった。
「記憶無くすタイプなんですかね?」
「うーん…かもしれません。あまり覚えて無かったりしますし」
ほわほわと柔らかな笑みを絶やさぬロシュ。
冷め始めた焼魚を頬張り、ヴェスカは多少なら影響無いんじゃないですかねと軽い気持ちで口にした。
『やめとけ』
「あんたやたら止めてくるなあ」
『…多分、恐ろしい事が起こる』
術者と意識が繋がっているせいか、ファブロスはロシュに酒を飲ませると厄介な事が起きるはずだと先読みしていた。
ロシュは大丈夫だと思いますよと安心させるように微笑む。
「一口位では何ともありませんから」
「ほらあ!」
何故かヴェスカは勝ち誇ったようにファブロスに目を向けて笑った。
「本人が言うなら大丈夫なんだって」
『私はオーギュと意識が繋がっているのだ。絶対やめておけ。嫌な気しかしてこない』
必死に止めようとするファブロスの忠告をスルーしながら、ヴェスカは小さめのグラスに少量のワインを注ぎ始める。
ファブロスは『ヴェスカ、実はお前は馬鹿なのか』と初対面にも関わらず突っ込んだ。
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