第一章:アストレーゼン

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第一章:アストレーゼン

 暖かな日差しに包まれ、真っ白な法衣に身を纏う司祭は書斎机の上で寝入っていた。大量の書類の山に囲まれながら、さも居心地良さそうに。  ブラウンの緩やかな髪が風に揺れ、その端正な顔は夢でも見ているのかとても幸せそうに見えた。  魔法と司祭の国、アストレーゼン。  隣国の寒い地域、シャンクレイスとは違い、温暖な気候で緑と水に恵まれた、比較的過ごしやすい国。国王は存在せず、司祭の頂点と言われる司聖という立場の者が最高位に立っていた。  あらゆる物事に秀でた、魔法の能力も高い魔導師から選別され、偉方からの支持を集めた一人がようやく司聖となれる。  司聖や司祭は人々を救う魔法しか使えず、それまで習得した魔導師としての魔法は禁忌魔法の扱いとなり、万が一使用すれば忽ち罰せられてしまう。そして、堕落の証として体の一部に模様のような痣が出現するのだ。  規則正しく、品位を保ち慎ましい生活を強いられる司祭の頂点。彼は今、仕事場であり自室でもある塔で爆睡していた。 「…はっ!?」  突如、がばっと頭を上げる。     
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