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寝惚けていた頭をぶるぶる振り、いかにも仕事していた風を装った。下から向かう魔力の気配を察し、瞬時に目を覚ましたのだ。
間を置いて、下から突き上げてくる爆風が巻き起こる。慌てて書類の山に手を当て、飛ばされないように押さえた。
魔法で階下から浮上されるのには慣れたが、突風で色々な物が巻き上がってしまう。部屋のカーテンがぶわりと舞う中、着地した足音と共にただいま戻りましたの声が飛んできた。
「もう!書類が飛んじゃいますから階段使って下さいよ!」
片付けるのが面倒で悲痛な声を上げる。
ベランダからするりと入った乱入者は、表情を変える事もなく階段が長いんです、と答えた。
「仕事は進みましたか、ロシュ様」
床に散乱された書類を回収すると、白の独特なラインの入った灰色のローブを身に付けた青年は問う。
「やってますよ」
「顔に服の跡がありますが」
「ややや、やってますって!」
彼を補佐する魔導師は、呑気な相手に溜息をつきながら「それならいいんですが」とだけ述べると回収した書類を机に置いた。
「毎度毎度厳しいなぁ、オーギュは…」
「誰のせいですか」
監督役がきついのを軽く愚痴りながらも、何故か楽しそうに呟く、穏やかな表情を称えた、物腰の柔らかい司祭の長…ロシュ=ネレウィン=ラウド=アストレーゼン。
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