第一章:アストレーゼン

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 優しい表情が良く映える美貌の司祭と言われる彼は、外見はとにかく見惚れる程の美形。  ふんわりと笑うその顔は、人々が惚れ込む位でアストレーゼンの天使とまで謳われるのだが、昔馴染みの魔導師オーギュにとっては外面が良過ぎる詐欺師にしか見えないようだ。  風船のように今にも浮きそうなロシュとは違い、常に側で監視役の役目をするオーギュは真逆の冷たい印象を与えてくる知性派。銀の縁取りされた眼鏡の奥にある切れ長の目は、有無を言わさぬ何かを感じさせ、細かい事を見逃さない性質を剥き出しにしてくる。  すらりとした背丈でなかなかの美形なのだが、その性質のせいで近付くのは幼馴染のロシュや同僚の魔導師仲間位のものだった。  ロシュから見たオーギュの印象は、素直じゃなく負けず嫌いの意地っ張り。常に冷静を装うのは、それを隠す為だろうと思っている。  外面の良い詐欺師と負けず嫌いの意地っ張り。アストレーゼンは大体、この二人によって支えられている。 「何ですかこの書類。汚い文字で読めなさ過ぎですよ」  次々と捌いていた書類に目を通していたオーギュは、ぐったりしながら文句を垂れる。ロシュの机の前に置かれた来客用のテーブルに書類や本を置き、同じように仕事をこなしていた。     
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