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第七章:似た者同士 ■
温泉街リドランから帰還してから、ロシュとオーギュはその間溜めていた仕事の為に司聖の塔に篭りっきりの状態となり、リシェは護衛の仕事も無いので宮廷剣士として兵舎に通う日々を送っていた。
汗臭い男所帯の面白味の無い環境の中、班ごとに分けられて各々の作業をこなしていく。
「先輩、どう?護衛の仕事は」
目立ちたくないリシェは黒の宮廷剣士用の制服を着用していた。隣で施設の修復作業の仕事を一緒にこなすラスは、穴掘りをするリシェに問う。
「護衛…っていうか、単に同行している感じがする」
自分ではロシュを守りたいのだが、ロシュといいオーギュといい、自らを守る手段を持っていて自分の出る幕が無いのが現状だった。
しかもヴェスカまで居るとなれば、自分が役に立っているのかどうかも疑問だ。
「でも勉強にはなる」
スコップに足を掛け、固い土を起こした。
へえ…とラスは作業の手を止めてしまう。
「どうした、ラス。手動かさなきゃ終わらないぞ」
不思議そうに首を傾げるリシェに、ラスはやや不愉快そうに膨れっ面を見せると「楽しそうにしちゃってさ」と文句を垂れた。
「大体、その目の色。先輩、そんな色してたっけ?」
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