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ロシュは大きなリクライニング式の椅子から立ち上がると、どれどれ…とオーギュから書類を受け取ると、つい吹き出してしまう。
「わ!…これはこれは。ミミズのような文字で暗号化されていますねぇ。ふふふ、殴り書きですかね?随分急いで書いた感がある」
苛立つオーギュとは逆に、ロシュは楽しそうに文面を眺めていた。
様々な人々の要望を受け入れるべく、彼らは日頃書類に目を通していくのだが、記載されていた項目は目を凝らしても読みにくい内容だった。
記入する時はきちんと明確に書くように頼んでいたのだが。
「護衛兵舎専用の要望書ですよ。これじゃ対応したくても出来ないじゃないですか、汚すぎて。直接聞きに行くしかないですよ、あぁ面倒臭い」
「それなら私がお伺いに!」
ここぞとばかりに目を輝かせるロシュが申し出るが、ばっさりとオーギュはぶった斬った。
「そう言ってサボる気でしょう。私が行ってきますよ」
「そ、そんなあ」
しゅんとするロシュを無視し、オーギュはスッと立ち上がると、仕事をしたくなくて現実逃避しようとする彼にちゃんと決めた場所まで書類に目を通すようにと釘を刺してベランダから飛び降りていった。
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