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どう贔屓目に見てもまだ十代。自分がその年の頃は遊び歩くのに夢中な時だが、この少年はそんな事には全く興味が無い様子。ただひたすら剣技を磨き、命の危険があるかもしれない物騒な場所へ好んで来るとは、頭のネジが飛んでいるに違いない。
そして、男にするには惜しいその風貌。
隣国の人間の特徴と言われる白い肌に、少しの事でも折れてしまうのではないかと心配になってくる華奢な体つき。どう考えても筋肉だらけの剣士達よりは遥かに浮いていた。
優男、というよりあどけなさをひたすら隠す少女にも見える。
対戦しても、彼は力は無い。その代わりに普通の剣士より素早く、身のこなしが生かされていた。
対戦相手を翻弄するかのように、こちらの動きから先手を取ってくる。憎たらしい位に。それはさながら風の妖精のように、素早く動き回るのだった。
「さっさと立ったらどうです」
彼…リシェは先輩に冷たく言うと、練習用の古びた木製の剣を鞘に収める。
「練習、もうやらないならいいけど」
男はちっと舌打ちした後、憮然としながら体を起こす。
「誰がやらねぇって言ったよ?」
後から来た人間に、虚仮にされる訳にはいかない。先輩としてのプライドもある。
「その生意気な態度を改めさせねぇとな」
リシェの手にある剣が、再び抜かれた。
「なら俺に勝って尊敬させて下さいよ。こっちより力があるんだから」
いちいち突っかかる言い方しか出来ないのか。
「このクソガキ…」
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