第五章:召喚獣 ■

2/59
708人が本棚に入れています
本棚に追加
/1943ページ
 見た感じ、同じ年齢位だろうか。その重厚感溢れる姿は、ベテランの様相だ。リシェのような若者では纏えない雰囲気がある。  帯同している仲間らも、やはり重装備だった。年季の入った武器を背にしている。 「そうなのね。残念。地元の子なら案内して欲しかったのにぃ」 「馬鹿言え、地元の子がこんなしっかりした魔導師の格好するかよ」 「兄ちゃん悪かったな。こいつの癖なもんで勘弁してやってくれ」  彼女の暴走を止めるのに慣れているのか、浅黒い肌の土埃に塗れた男はオーギュに謝った。 「いえ」  ぺこりと頭を下げ、その場からすぐに離れる。  理由はどうあれ、女性から声をかけられるのは悪い気はしないものだ。  露店から放たれるグルメ的な匂いが鼻を突く。同時に客を呼ぶ威勢の良い声。浮き足立つ旅行者の波。  …若干人酔いしてきた。  騒めく人の流れの中周辺を見回していると、住居が密集しているエリアに視線が止まる。道端に展開されている露店の他にも、別の違ったものが発見出来そうだ。  少し寄って行くか、と思い立った。  石畳を軽く蹴るように足早に進む。  開かれた露店通りとは違い、住宅街は往来する人間達は少なく見えた。歩きやすくて丁度良い。  たまに住人御用達の店舗がある他は、特に変わったものは無いようにも思える。  個人的には薬草の店があれば有り難いのだが。     
/1943ページ

最初のコメントを投稿しよう!