710人が本棚に入れています
本棚に追加
/1943ページ
指摘され、リシェは「これか」と呟く。
若干暗めの赤に変色したリシェの瞳は、ラスを捉えていた。それは、リシェの持ち味である黒い髪と白い肌にやたらと映える。
「魔法を使えるようにして貰ったんだ。そしたらこうなってしまった。治し様が無いんだ」
ただでさえ同性と思えぬ可憐な姿のくせに、特徴がまた増えてしまうと心を乱される要素が増してしまう。
今でもリシェを抱き締めて頬擦りしたくなるのに。
「くれぐれも先輩方に悪戯されたりしないで下さいよ」
「お前が言うのか?」
「…俺はいいんですっ!」
冷静なリシェのツッコミを、ラスはムキになって返した。ラスにとっては、好意を持っているんだから自分はカウントされないらしい。
リシェは一緒にしないでくれと反発する彼に圧倒され、そうかとだけ返事をした。
再び黙々と作業していると、砂利を踏み締めこちらに近付いてくる足音が聞こえてくる。
「ラス!」
木の板を重ねて釘を打ち込んでいたラスは手を止め、最近仲良くなった同僚にああ、と笑顔を見せた。
「今日は補修作業なんだ?」
「そ。やってもやっても皆ガサツですぐ傷むから困るよ。ましてや木造だしね」
聞き覚えのある声にリシェも手を止める。
最初のコメントを投稿しよう!