朝に恋して

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 夜中、眠れずにヘッドホンをつけて音楽を聴いていた。それは平成の初期頃に発売された物で、なんで買ったのかは今では思い出せない。  この歌を聴いていると、今でも涙が零れてくる。絶望と一緒に自我が溶かされて、全てを見失いかけていた自分を思い出すのだ。  平成という時代は、明るい時代だったのだろうか、それとも暗い時代だったのだろうか。それはわからないけれど、少なくとも平成初期は僕にとって夜その物だった。半ば頃になって空が白みはじめ、ゆっくりと太陽が姿を現したのだ。  ふと思う。僕にとって今この時は日が照らす明るい時間だけれども、昔の僕のようにつらくて悲しくて寂しくて、月の光も無いような、果てのない夜のように感じている人も沢山いるのでは無いかと。  窓のカーテンを開けて、夜空を見る。濃紺色の空に、大きいもの、小さいもの、様々な星が輝いている。とてもきれいだと思った。  きっとこんな風に、人の不幸は客観的に見ていると、時としてうつくしい物ととらえられることもあるのかも知れない。それが不幸かどうかを決めるのは、その目に遭っている当人なのだけれど。
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