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ウィルは感情を殺した声で返答した。
船外活動をする基本理念で、二人以上の人間が必ず組になって互いをサポートしなければならない、というのがあった。
ここにくるまでみてきたウィルはいいやつだと思う。その点では彼には不安はなかった。
「応急処置の用具はどこだい?」
気密服に着替えながら、彼は尋ねた。
「用具?…ああ、すぐ俺が後からもって出るから先に問題の箇所を見てきてくれないか?」
ウィルはやけにもたもたと気密服を着るのに手間取っていた。
彼はしかたなく、先にエアロックに入り、命綱一本を頼りに船外へ出た。
この宇宙船の目的地であるリゲル恒星系が、わずかだが確実に近づいてきている。その証拠に、リゲルの青白い光がまぶしかった。
彼は勇気がある方だが、さすがに虚空を泳ぐのには不安があり、船の外壁をつたって移動して行った。
ウィルの話どおりならば、そこに直径二㎝の穴があるはずだったが、穴どころか小さな傷一つついていなかった。
これは…どういうことだ?
彼は眉根を寄せ、そして何かの予感に突き動かされるように大慌てで船内へ戻ろうともがいた。
気密服内の通信機が機能していない。
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