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「俺の目的地はあそこだ。誰が何の権利があって俺をこんな目に合わすんだ。ウィル!次に会った時を覚えていろよ。次…?俺はまたお前に会うのか?…会えるのか?」
長い沈黙。答えは出ない。
「リゲル。リゲルよ。俺はお前の光の下で俺の夢をかなえるためにここまで来たんだ。生まれ故郷の星を捨ててまで。それなのに、俺の旅はここで終わりなのか?」
長い沈黙。やはり答えは出ない。
いろんな思いが駆け巡り、そして消えていった。
時間が経つにつれ、やがて彼の意識は遠のいてゆき、だんだんと、もうどうでもかまわないとさえ思い始めていった…。
☆
そこは一面の麦畑。金色の風が渡ってゆく。
暖かい空気に包まれて、見上げる青空は雲一つなく冴えわたっていた。
いつからか彼は一人でそこに立っていた。
「俺は何をしていたんだっけな」
そして何をするつもりだったのだろう、と思った時、ふと何かの気配を感じた。
ちりちりちりん。
鈴の音だろうか?どこからかかすかに聞こえてきた。彼が辺りを見まわすと、いつのまにか風がやんだ。
空を振り仰いで、どきり、とする。何かがここへ降りて来る。
それは人の形をしていた。
それは重力を感じさせず、ふわりと宙に浮かんでいた。
身にまとった赤い衣は、ちろちろと炎が燃えているかのように見えた。
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