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赤・橙・黄・緑・青・藍・紫…。
中央の黒いひとみを虹の七色が縁取っていた。
こんなこと、ありえないのにな…。
彼は軽いめまいを感じた。
目前の人物のひとみの中にいつのまにか、また別の世界・宇宙が広がっていて、彼を容赦なく吸い込んでいったー。
☆
目を開けると、まぶしさに目がくらんだ。
「ドクター。意識が戻りました」
かたわらで聞き慣れない女性の声がした。
やっとのことで薄く目を開くと、かろうじてベッドに横になった彼の周囲を複数の人物が囲んでいることがわかった。
消毒薬の独特の匂い。
向こうでてきぱきと器具を扱う手の甲に医療用のアンドロイドに義務づけられたロットナンバーが見て取れた。
「ここは病院なのか…」
彼が息をつくようにつぶやくと、担当医が彼のそばに来た。
「意識ははっきりしていますか?…あなたは宇宙空間を一人で漂っていた時に偶然通りかかった貨物宇宙艇に発見されて保護されたのですよ。ここに収容された時には恐らくもう意識は戻らないものだと思っていましたが…。これは奇跡とでもいうのでしょうな」
ああそうか、と彼はぼんやり思った。
どこからどこまでが夢で、どこまでが現実なのだろうか?
しばしの混乱。
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