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何とも、歯がゆいばかりだ。
その頃、土佐にいる龍馬も思い悩んでいた。
目まぐるしく変化する世の中の情勢、その中にあって自分だけが取り残されて行くような気がしてならなかった。
「どういた龍馬?何をそればぁに考えちゅう」
庭先を見詰め考え込む龍馬に、乙女(とめ)が尋ねた。
「あぁ、お乙女姉やん…」
「姉やん…ではないろうが!」
気の抜けた返答に、乙女はただ呆れ返る。
「いや…そがな事より、姉やんはまぁた岡上の家を抜け出して来たがかえ?まっこと、しようがないねや…」
お返しとばかり、今度は龍馬が呆れ返った。
坂本家と岡上家は、道を挟んで向かい同士だ。とは言え、岡上の家で何かあれば、その都度すぐに乙女は実家に戻っていた。
その挙げ句、旦那の樹庵や姑の愚痴ばかりをこぼす。龍馬にしてみれば、堪ったものではない。
「龍馬…たまにはどうぜ?」
まるで、話を逸らすかのように乙女が竹刀を取り出す。
「全く…姉やんは、嫁に行っても相変わらずじゃのぉ…」
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