それが今日。

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不意に思い出してしまったのは、多分似ていたからだ。 意識が薄くなっていきながらも最後まで私の事を心配しながら手を握ってくれていたおばあちゃんの丸い手……。 その手が好きだった。 肉厚でむちむちしていて温かくて……。 思った瞬間にはもう目の奥が熱くなってじゅわっと涙が溢れた。 「……ぇっ!?美桜?」 彼がぎょっとした顔で私を見る。 「あ,ごめんなさい……なんか急に……ごめ……」 自分の流した涙に動転して、彼の指を慌てて離した。 彼の前で感情が漏れ出てしまったのが恥ずかしくて手で隠して俯く。 彼からも距離を取ろうと後退りしていくのに、伸びてきた肉厚の指が壊れ物に触れるように躊躇しながらもそっと私の頬に触れて涙を拭う。 「ごめん、触って……。でも、泣かれたら俺……我慢してるのに、余計に触りたくなる……から、これ以上は……」 彼の声から伝わる戸惑い。 「ごめん、もう泣き止む……から」 滴を残さず拭いきる。 泣いた理由が『あなたの手が私のおばあちゃんそっくりだったから』と言ったら、彼はどんな表情を見せるだろうか。 そう思うと、つい可笑しくて笑みが漏れる。 泣いて笑って忙しい私。 隣には熊男は困惑気味につっ立っていた。 「行こう、イルカのショー始まるって」 恥ずかしさを誤魔化すように私は彼の肉厚ムニムニの指を一本握って歩き始めた。
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