それが今日。

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一生涯一人で生きていけるようにと手に職をつけるべく栄養士の資格を取るために昼間には短大に通いながら夜はこうしてファミレスでアルバイトをしている。 その私には今、嘗て無い敵が居る。 「ほら、これ食いな」 その人がドシンと大きな音をたてて私の向かいの席に座りながら大盛りのカツカレーをゴトンと置いて差し出してきた。 「……いえ、大丈夫です。今お腹空いてませんので」 「は!?俺の作った飯が食えないのか?カツまで乗せてきてやったんだぞ?」 大きな目。 大きな声。 大きな体。 大きな態度。 熊男みたいな彼の存在に、私は困惑している。 名は体を表すとよく言うけれど、彼はその言葉がぴったり。 大熊猛。 年齢は私より二つ上だと聞いたことがあるけれど、絶対にそうは見えない。 もっと老けて見える。 大抵の人なら私が壁を作ればそれ以上侵入してこようとしないのに、彼はどうしてか私が幾重にも作る壁をガシンガシンと壊して入ってこようとする。 『彼氏いないなら俺と付き合わない?』 『美桜って細いから抱いたら折れちまいそうだな』 『やっぱ美桜、俺お前のこと好きだわ。キスしてぇ』 『ああ、その幸薄そうな耳食いてぇ』 『俺がおっぱい揉んででかくしてやろうか?』 今までのセクハラトークを上げたらきりがない。 「いえ、本当にいりませんから」 「食えるだけで良いから食えって。いつも大して食わないからガリガリじゃねえか。抱いたときに皮と骨だったら嫌だろ?だから俺達が付き合うまでに今からたくさん食わなきゃ」 それはセクハラ、という突っ込みはもう誰もしなくなった。私も三日前から中々取れないでいる咳をしながら彼を無視してスマートフォンをいじる。
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