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「は?お前蜂蜜大根くらい知ってるだろ?それの玉葱バージョンだって」
「……だから何ですか、それ。蜂蜜大根?」
「違うって、これは蜂蜜玉葱。スプーン二杯飲め。咳に効くから。お湯で割っても良いけど、飲み方は任せる。玉葱も生姜焼きとかに使えば良いから食えよ。蜂蜜は今すぐ飲め、まめに飲めよ。分かったな?じゃあ、な。また明日」
自分の言いたいことを一気に並べると彼はスッキリした表情でドアを閉めて帰っていった。
熊じゃなくて嵐のような人……。
そういえばおばあちゃんも昔、私が風邪を引く度に蜂蜜ニンニク作ってたな。あれは子どもには激不味だったけれど。、今ならもう少し美味しく食べられたのかな……。
ニンニクとか玉ねぎとか大根とか……蜂蜜ってすごいなぁ、とガラス瓶の中を覗く。
今日は家の中に入ってこなくて、良かった。
前回の炬燵の時には部屋の中まで運んでやると強引に入ってこられた。
二人とも早番のシフトだったから昼間ではあったけれど、正直女の独り暮らしに無理矢理入ってくるその神経が分からない。
そのデリカシーの無さに、本当に勘弁して欲しいと強く思っての先程の忘れた振りだったのに……こんな時間にわざわざ私のために、しかも彼の家はファミレスを挟んで逆だったはずだから、遠回りして寄ってくれたなんて……と少しだけ罪悪感が胸をちくんと刺した。
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