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その言葉が、余程ショックだったのだろうか。
それから彼が私に話し掛けてくることはなくなった。
時々こちらを向いて何か言おうと口を開き掛けるけれど、はっとした顔をして目を背ける。
そんな姿を何度か見せつけられると、さすがにあの時私も少し言い過ぎたかと心にまた罪悪感のトゲが刺さった……。
「……すみません。先日は少し……その、言い過ぎました」
彼が壊そうとした壁をそのまま閉ざしてしまえば良かったのに、なぜそんな事を言ってしまったのか。
みんなには相変わらず気さくに話し掛ける彼が、私には躊躇しているその姿に、私の中にもやもやした何かが生じ始め少しずつ心が落ち着かなくなってきたからかもしれない……。
「やだ」
口を尖らせて彼が言う人
やだって、そんな……。
いい大人が……。
「……すみません。前回言い過ぎたのは反省してます。……でも、まぁ許してくれないなら、分かりました。仕方無いですね」
嫌われたならそれまで。
別に取り繕おうとしてまで深追いはしない。
今までずっとそうしてきた。
所詮は働く先が一緒っていうだけの関係だし。
「え?やっちょっと待ってって、何だよそれ、許してくれないなら、更にもうちょっと何か一押しとか無いのかよ」
「だって許してくれないなら仕方無いんじゃないですか……」
はあっと深いため息を吐いて彼が手で顔を覆う。
「何だよそれ。じゃあ俺、お前と付き合ったらこれからもずっと、拗ねたり怒ったりとか出来ないじゃん」
と言って、大の大人が怒りながら拗ねている。
正直、面倒臭い。
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