恋のかけら。

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「蛍、ひらり。」 あなたが初めて、弱さを見せた。 蛍になって、私の手の届きそうなところで こちらを見ている。 光の中で浮かんでいる。 あなたの視線を ずっと感じていた。 でも、ほんとうに あなたは弱いの? 掴まえてほしくて、そばにきたのでしょ。 ううん、ほんとうは 私を捕らえにきたのでしょ。 つかまったふりをしてまで。 数多ある光の中で、あなたの琥珀の灯りは 私にはわかる。 私は 気に入ったものは手にいれないと 気が済まないの。 明日の私は、わからないけれど。 やさしいふりで、手をさしのべてしまう。 あとのことは 何も考えずに。 ね、 夜汽車に 一緒に乗りましょう。 山から降りてくる時、てのひらに乗せてあげる。 下界の灯りは 街の灯り。 仲間はいなくても 淋しくない? 片思いだけが恋なのに、叶ってしまった私の恋。 きっと、すぐに終わってしまう。 * ふっと側にやってきて、そっとやさしく撫でてくれる あなたにとって、私はどんな存在? いつでも消えるからなんて 言わないで。 すきだと告げるのは、自分のため。 心配してるよと 首を(かし)げるのは、相手のため。    君を 誰にも 渡したくない。    君は 永遠に 僕のもの。 そう言ってほしくて、また閉じ込めてしまう。 ね、 私の指輪になってくれる? あなたは やさしい尋ね人。 そばにいてくれるなら。永遠になるなら。 或いは この一瞬だけで 構わないから。 * 「夜汽車の蛍」によせてくれた、K君の「羽を閉じる」に呼応して。  
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