恋のかけら。

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* ねぇ、声を知らない人の、声を聴きたい。 少しだけ、画面に横たわる文章から伝わってくる。 きっとあなたの声はこんな風だ。 私には今にも、聴こえるような気がしたんだよ。 君はこう言ってくれた。 人の声の聞こえる文に、時々他の音や、匂いや、色が見えることがある。 あなたの文字から声が聞こえると、僕はどんな人なのか気になるんです。 ね、私の声は、君に伝わりましたか。 * 恋の欠片は尖っていて、ささると痛い。 幾重も重なる、いつかの終わる恋と共に 声も匂いも、いつしか記憶から薄れゆき、色褪せた風景と化す。 なのに夏の終わりに、秋の香りと共に ふとした瞬間に帰ってくるのは何故。 いったい、幾つ落ちているのだろう。 拾って壜に集めたのに、またキラキラと。 性懲りもなく。 もう 忘れてもいい。 もう 忘れたはずだ。 いつまでも執着しないよう。だから、風が吹く。 なのに、なまえを呼ぶ声が聴こえたら 私は、はいって、返事をしてしまいそうだ。
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