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「紗々紙の紫陽花」
彼女の視線が はっとして動く。
紫陽花の滴の向こう側に、誰をみつめているの。
彼を見つけた途端、少女のあなたは
無邪気に 紫陽花の周りをまわって、二人はぶつかる。
この気品のある花にふさわしくない行為を
禁じられた遊びのように、ふざけて楽しむ。
彼は、横顔で 彼女を眺めている。消えるまでの間。
*
彼女がめくる頁には、うすい紗々が かかっていて
紛れもなく あなたのものだということが
百メートル先からでも 香ってくるんだよ。
それに誘われて、蝶がやってくる。
紫陽花の色は、土によって変わるって聴いたけれど
それならば、地層にも 秘密の箱が埋められているんだね。
紫陽花の形は、四角かったり ハート型だったり
あてどないのに誰が決めるの。 ね、教えて。
淡い薄紙を 手に入れたの。
たくさん切って あじさいを 作りましょう。
うす紫、淡ピンク、緑がかった白。 気紛れに咲く金平糖のように。
甘くてせつないものたちが 集まってきた。
*
あなたの存在は、雨の気配と共に 鬱陶しい梅雨さえ
まるで素敵なもののように、変えてくれる。
あなたがいてくれたから ここまで来られた。
私は雨のように、あなたに雫を届けられる存在でいたい。
気品ある 凛とした だいすきな すてきな人に。
*「紗々紙」は造語。 いとしのサーシャ。
今でも こころの中で慕い続ける かの美しい人の作品に捧げます。
たとえ、もうあなたが 私を忘れたとしても。
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