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今日は特別な日だ。
だって、今日こうしてあなたと出会えたんだから。そうでしょ?
70億人も人がいるこの世界の中で、今この場所でこの日、この時間、同じ場所を通りかかるなんて、そんなの偶然で片づけていいようなことじゃないんと思うんだ。
えっと、こういうとき何て言えばいいのかな。
確か、前に会ったお婆ちゃんからちょっとオシャレっぽい言い方を教わったんだよ? ねぇ、どうやってこの気持ちを言い表したらいいと思う?
んー、そっか。
わかんないかー。
えっとね、あっ、ちょっと待って?
もうちょっとで思い出せそうだから。
あっ、わかった!
ねぇ、思い出せたよ?
「月が、綺麗ですね♪」
= = = = = =
翌日、惨殺死体が路地裏で見つかった。
全身をめった刺しにされて、泣き叫んだ顔のまま殺されていたその男の亡骸を、リヒャルド警部は見下ろす。
凄惨な死体である。思わず目を背けたくもあるが、何故だろうか。
街で起こる連続殺人。
まずは足の神経を切断して動きを止め、それから腕を刺してから、改めて他の部位を刺す。検視の結果判明したその手口が似通っていることから、恐らく同一犯によるものとは思われる。
何よりの共通点は。
どういう部分でかはわからない。根拠などない。ただの私見ではあるが。
その死体に対する犯人からの愛情らしきものが窺えることだった。
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