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「滝くん、本当にいいの?」
カナの手にはみんなに配ったのと同じトリュフが四つ入った透明の袋が握られている。
総勢五十五名の部員プラス引退した二十九名の先輩のために作ったとすれば三百三十六個も同じものを作り、それぞれにラッピングしたことになる。五人のマネージャーで手分けしたとはいえ、かなり大変だったことだろう。
事前にいらないと言っていたにもかかわらず俺の分まで用意してくれていたことに感動する。
だけど、ここでこれを受け取ってしまっては俺の意地が立たない。
「わざわざ用意してくれたのにゴメン。今年はマジで本命しか受け取らないから!」
おつかれーとカナをかわして自転車置き場に向かう。義理チョコを断り続けた結果、俺の収穫はゼロだったが、それはそれで清々しい……と、思うしかない。
なんて嘘だ。バレンタインなんか大嫌いだ。
モテない男には現実を思い知らされる辛いだけの日になる。身の程を弁えていても、強制的におまえの評価はこうだぞって突きつけられるのだから。
さっさと帰って寝てしまおう。
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