scene3-3

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scene3-3

 相手が高級言語を話すことだけはわかったが、その中身まではわからない。コールバンドはコールバンド同士の会話しか補助してくれないし、俺の高級言語に関する知識は拾い読みによって構築されているのでどこまでも断片的だった。 「何言っているかわからん。他に言葉は喋れないのか」  開き直っていつもの言葉で俺は叫ぶ。両手を挙げ、首を横に振るジェスチャーつきだ。最後に頼りになるのは、なんといってもボディーランゲージである。  どんな反応が返ってくるのかと期待していた俺は、少女が真剣な眼差しでこちらを見つめているのに驚いた。そして、ぶつぶつと小さい声で何かを呟き続けている。「…なに──いってる、の、か、…わから…ん……──ほかに……」  どうやら俺の言葉を反芻しているらしい。自らの言語として理解しようとしているのかもしれないが、残念ながら俺が喋っている低級言語と、おそらく彼女が喋っているであろう高級言語には共通点が一つもない。語順も語彙も、基本的な文法すら違っている。せめて彼女がバンドをしていれば、そのことを伝えられたのだが、そもそもそれがないからこのような状況に陥っているのだ。     
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