scene3-3

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 とりあえずマスダに連絡するか、それとも管理センターのAIに報告するか。  いくつかの対応が頭に浮かんだが、俺の心はそのどれにも賛成していなかった。こちらを見つめ続けるその少女を、俺も見つめ返す。印象的なのはその瞳だった。彼女のような瞳は、これまで見たことがない。AIが宿るアンドロイドは、どこまでも無機質だったし(人間と区別するために、あえてそのようにデザインされているらしい)、同じ穴ぐらの住人たちは、誰もが諦観と酩酊が交じり合った目で笑い合っている。吐き気がするくらいに濁った目だ。もちろん、俺もそんな目をしているのだろう。  少女の目は違った。何がどう違うのかは説明できない。しかし、そこに俺たちとは違う何かが宿っていることははっきりとわかった。温かい。俺の心を掴んではなさいその瞳には、ぬくもりがあった。胃を焼くような酒が持つ熱さとは違ったエネルギーだ。  俺は彼女を自分の寝床へ連れ帰ることにした。やっかいごとになるのは目に見えていたが、それでもそれ以外の選択肢はないように思えた。それに、俺たちはゴミ漁りだ。有益だと感じるものを、自分の所有物にすることがAIに認められている。だったら、このゴミの山で拾った少女だって同じだろう。     
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