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scene2-2
さっさと作業に戻れよ、とだけ言い残してマスダは去っていった。それが奴の仕事なのだ。逸脱者を見つけて、注意すること。それだけだ。誰かを罰することもなければ、評価もしない。そんな責任ある仕事を奴は望んでいない。「俺は、リーダーぶるのが好きなんだ」とマスダはよく言っている。実際にリーダーになりたいわけではない。単にそれっぽく振る舞えればそれで満足なのだ。AIは、それに適した仕事をあつらえた。俺たちにしたのと同じように。
AIは、人間の幸福のために行動するようプログラミングされているので、俺たちのようなグズだって、放り出したりはしなかった。いっそ無慈悲に殺されていた方がよかったんじゃないかと思うことすらある。そうすれば、少なくとも何かを憎むことはできただろう。が、AI様は、そんな醜い感情を持つことをすらも禁止した。そして俺たちは、俺たちの性質に見合った仕事を割り当てられて生きている。いや、生かされている。
ゴミ、ゴミ、ゴミ。
お前たちにはゴミだまりがお似合いなんだと、AI様から告げられているわけだ。その視線には侮蔑も嘲りもない。物差しのように真っ直ぐで虚無な視線だ。胸くそ悪いったらありゃしない。
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