scene2-3

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scene2-3

 ゴミ集めなど、自足型ドローンにやらせればもっとスピーディーだし、何よりコストがかからない。こんな仕事だって、俺たちには給料が支払われている。しかし、AI様はお偉いので、ちゃーんと知っているのだ。低コストを追求しすぎると、不具合が生じてしまうことを。だからこそ、ゴミ集めしかできないような人間のために、ゴミ集めの仕事をあつらう。見事なもんだ。  奴らは、俺たちを放置していたら、すぐさま自暴自棄に放蕩しはじめることも理解している。俺たちに必要なのは、自由なんかじゃない。仕事なのだ。少なくとも奴らはそう考えているし、俺以外の人間も概ねそのように理解しているらしい。まあ、こんなくだらない仕事をやって給料がもらえるんだから、考えようによっちゃ悪くない生活だとも言える。酒も飲めるし、たまに女も買える。そうやって日々を潰していくのだ。AI様に見守られながら。  俺の半分は、それでいいと思っている。だから、逃げ出さないのだ。だいたい逃げ出してどこに行くというのだ。俺たちは壁を越えることができない。たとえ越えられたにしても、IDなしで生活することは困難だ。今の世界には、捕獲して食べられるような野生動物はどこにもいない。工場から運ばれてくる加工食品だけが、俺たちの生命を支えている。  ポーンという軽い告知音が、スイッチをオンに戻したコールバンドから聞こえてきた。  そろそろ新しいゴミが流れ着く時間だった。
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