scene3-1

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scene3-1

 ゴミ着き場には、まだ誰もいなかった。それもそうだろう。いくら新しく流れてきたとはいえ、ゴミは所詮ゴミでしかない。そこら中に積み上げられているまだ掘り起こされていないゴミとたいした差はない。わざわざ新しいゴミを求めてやってくるのは俺ぐらいなものだろう。  あいかわらず新しいゴミは混沌としていた。ゴミ山のようであって、ゴミ山のようではない。多くの手が入り、掘り起こされた後のゴミは正真正銘のゴミ山という感じがする。いささかでも使えるものは俺たちが発掘するから、そこに残るのは本当にどうしようもないゴミばかりだ。不思議なことに、そうして残るゴミはいつものように同じ顔ぶれである。まるで俺たちみたいじゃないか。似通った場所には、似通った奴らが集まる。そして誰にも見向きされることはない。  昔拾った本の冒頭に気の利いたことが書いてあった。「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」。だったらこのゴミの山は幸福なのだろうか。そうなのかもしれない。     
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