scene3-1

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 カメラがありスコップがありドリルがありネックレスがありカバンがあり壁紙がありビニール袋があり帽子があり古びた雑誌があり日記がありタオルがありクッションがあり送風機があった。奇妙な組み合わせだ。個性的と言ってもいい。この山もいずれは掘り起こされ、その辺のゴミ山と変わらなくなる。  俺は古びた雑誌と日記を拾い上げた。どちらも本ではないが、俺にとっては立派な読み物だ。特に古いほど失われた世界についての記述が見つかる可能性が高い。そうでなくても、他の区画についての情報は知れる。そんなことを知ってどうなるのか、俺にはわからない。ただ、分解するしかない家庭製品や肉体労働にしか使えない道具を拾うよりも、俺によっては有益なだけだ。俺たちゴミ拾いに、客観的有効性など求められてはいないのだ。そもそも、しなくてもいい仕事をしているのだから当然だろう。  さらなる本を求めてゴミ山を歩き回っていると、ガシュ、ガシュ、という微かな物音が聞こえてきた。先客がいたのかと俺が待ち構えていると、急に目の前に人形が転がってきた。美しい人形だった。いや、あの人形は動いてはいないか。  まさかこんなところにいるはずはない、という思い込みがあったからだろう。それが人間の子供であると認識するのに随分と時間がかかった。しかし、ひとたびそう認識すればそれは紛れもなく人間だった。人間を模したアンドロイドではない。その強すぎる瞳が人間の人間たる人間性を、その意思を、主張していた。
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