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「今日は特別な日だ」 この一言が、みさ子は嫌いだった。 毎日のようにつぶやく父のこの一言が本当に嫌いだった。 毎日が特別だなんてこと、ありはしない。今日が特別なんだと自分に言い聞かせて人生を無理やり前向きに演出してかかるようなその言葉に、彼女は心底嫌気がさしていた。 「今日も特別な日がはじまるぞ」 朝食を食べながらか、終えてからか、洗面台の前でネクタイを結びながらか、必ず耳に入る父の決まり文句を聞くたびにみさ子の一日の始まりは曇った。母にも弟にも気づかれぬようくっとまぶたを閉じて鬱屈する気持ちを抑えるのはもう習慣になってしまった。 「お父さん、明日から入院するから。準備、手伝ってくれる?」 だから、母からその知らせを聞いた時にみさ子の感情は安堵に触れていた。
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