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父もばつが悪かったのだろうと思う。家の姿とはあまりに違う父の話の数々を耳にする娘の顔がずっと曇っているのを見て、自分の家族との関わりを省みることになったのだから。 だからと言って、こんな一方的な謝罪はーー 「ずるい、そんな謝り方はずるい」 そう思った。 出来なかった、伝えられなかった、わかってやれなかった。 全ての後ろめたさを一方的に過去にして、この場で清算しないといけない様な雰囲気を作ってかかるそんな口調は、とんでもなくずるいと思った。 別に誕生日を全く祝ってくれなかったわけでもない、褒めてくれることがなかったわけでもない。みさ子はそんな特別を願ったわけでもない。 なのに、これだけ色んなものを見せつけておいてやっぱり自分が悪かったなんて大人のずる賢い謝り方だ。 駄々をこねているわけでもないのに、子が親になだめられている構図が堪らなかった。 「そんなの死ぬ前の人の言葉でしょうが」 そう表現して返すのが、精一杯になってしまった。
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