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父の49日が終わったらすぐ一人暮らしを始めると言い切ったみさ子に、母はもう少し落ち着いてからでもと反対したが自分はもう落ち着いていると計画を遅らすことはなかった。
手早く着替えを済まし、朝ごはんを準備する余裕もないだろうと前もって昨日買っておいたサンドイッチを頬張る。母の用意してくれる朝食はない。朝ごはんにコンビニ食ということまで、彼女にとっては新鮮な体験だった。この生活に慣れてきたら自分で作ってみよう考えるだけで、少しわくわくする。
タウン情報誌を眺めながらなんとなく一人暮らしをしたいと思っていた気持ちが確信に変わったのは、父に謝られてからだとみさ子は思っている。別に、毎日を特別にしたいわけでは毛頭ない。今でもあの口癖が毎日のように聞こえてきたら滅入ってしまうことだろう。
ただ、昨日の晩御飯何を作って美味しかったかどうかとか、一昨日会社でこんなことが印象に残ったとか、会社からの帰り道に気になるお店を見つけたとか、そういう何気ないことをもっとずっと覚えていたら素敵なんじゃないかと思ったし、そうなりたいと思ったのだ。
そう思えるように実家を出た初日、それが今日。だから今日は紛れもなく特別な日だ。
メイクを整え髪を結い、パンプスを履いてドアに手をかける。
向かう職場はいつもと変わらない普段通りの場所だろう。
特別な日の、今日だけの真新しさも数多くあるだろう。
それでも彼女がこれから踏み出す道には、きっと知らない景色が数え切れないほど待っている。
end.
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