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日曜日の昼下がり。リビングのソファに寝転がってタウン情報誌を眺めている時だった。 就職して2年。実家を出て一人暮らしを一度は経験したいと思い、きっかけを探していた矢先のこと。 「いつから?」 「だから明日からよ」 明日からだと聞こえていた。それでも聞き返したくなった自分が可笑しい。 「いつまで?」 「わからない」 明日からだと目を合わせて答えた母が、わからないと返した時には明後日の方向を向いていたのを見て、みさ子は何となくで察する。良くはない。 「学校は?」 「そりゃしばらく休まないとダメでしょうよ」 学校というのは父のことだ。父は隣町の中学校で教員をしている。今は教頭なので授業に支障が出るとかそういうこともないだろう。そもそも教頭という職が何をしているのかみさ子は知らない。 同僚の勧めで行った人間ドックの検診で引っかかったのが理由だと聞いたのは、父が入院してからしばらく経ってからだったと彼女は記憶している。
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