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 チョコの町が、チョコの人形で賑わっていた。私はそれに駆け寄る。テーブルの上に広がる町で小さな人形がわらわらと動いていている。リボンをつけた人形と、蝶ネクタイを結んだ人形たちがいた。きっと、女の子と男の子、ってことだろう。鬼ごっこしたり、ダンスを踊ったり、その挙動の一つ一つがせわしない。扉を開けて家を出ようとした人形が、段差につまづいてずっこけた。カワイイ。おもしろい。ずっと見ていられる。私の心が再び、幸福で満ちていく。小さな人形が同じ方向にかけていく。その先にあるのはチョコの学校。小さな昇降口に子供たちが次々と吸い込まれて行って、あっという間に校舎はいっぱいになる。ひげを生やした、先生と思しき人形が、小さな棒で黒板をたたく。子供たちは先生の話に興味ないのか、隣のクラスメイトとささやきあっている。きっと、友達と一緒にいるのが楽しくてしょうがないんだろうな。あっというまに放課後になって、子供たちは校庭に飛び出す。ブランコ、滑り台、ジャングルジム。懐かしいな。スカートがめくれるのを気にしながら、校庭の遊具ではしゃいでいたころを思い出した。校舎の屋上に目をやると、女の子と男の子の人形が二人っきり。女の子はもじもじしながら男の子に歩み寄る。その手にはリボンが結ばれたチョコレート。女の子はうつむきがちになって、それを男の子に突き出す。男の子はそれを受け取って、女の子のほっぺにチューした。
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