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 しなるリボンのゲートに、蝶の睫毛のように巻いたフランスアルファベット。 「le Reve eternel」“溶けることのない夢”。このイベントタイトルをVivid Roomのバレンタイン特集で見つけてから、今日が来るのをずっと待っていた。駅や街角に貼られた広告を見るたび心が浮ついて、今年の私は、普通の女の子のように2月14日を楽しみにしていた。私のバレンタインに、一緒に浮かれる友達も、想いを伝える相手もいないけど。  紅いベールをくぐれば、広がるのは一日だけの甘い幻想。金色のシャンデリアに照らされた、チョコレートブラウンの世界。  並ぶテーブルの一つに繊細に、組み立てられたチョコレートのお城と、その足元に広がるチョコレートの町のジオラマ。その隣に、チョコレートの森で眠るチョコレートのトリケラトプス。チョコの花。チョコのテディベア、チョコの車。チョコの山、チョコ、チョコ、チョコ……何から何までチョコレートで……。おもちゃ箱をぶちまけたような、楽しい絵本から引っ張り出したような、荒唐無稽でステキなものであふれた空間。きっといま私の顔は、他人には見せないような笑みが浮かんでいる。一歩踏み出したとき、脚の感覚がおぼろげになっていることに気づいた。部屋を満たす甘い香りに、神経がやられているに違いない……。
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