1人が本棚に入れています
本棚に追加
パステルカラーのチョコレートで彩られたメリーゴーランド。チョコドーナツのフリーフォール。くるくると回るカップには、白い渦をはらんだココアが湯気を立てている。プレッツェルでできたレールはうねうねしながらテーブルを一周し、その上をヌガーのジェットコースターが走る。チョコのロボット、チョコの妖精、チョコのモンスターたちが集まり、ゆらゆら踊りながら広場の端から端を練り歩いた。
薄い羽をせわしくばたつかせて、チョコの蝶が私の周りを舞う。チョコのペガサスがココアパウダーの尾を引きながら私の眼前を横切る。その先にはチョコレートファウンデンの泉。中心の柱からとくとく湧き出るチョコレートは、シルク生地のようになめらかに流れていく。水面にホワイトチョコレートの海賊船が浮かび、横腹から伸びた大砲が勢いよくチョコボールを撃ちだす。
自由気ままに動き出すチョコレートたち。あ、私、夢見てるのか……。夢? 本当に? 現実? どっち? 赤い実のせい?
私はチョコマフィンの椅子に腰を下ろした。お腹の中からぶくぶくと笑いが込み上げてきた。フフ。ウフフ。ププププッ。笑いがだんだんオーバーになって、私は弾けるように椅子から立ち上がり、マーブルチョコのプールにダイブした。頭から飛びこんだから、口の中にチョコが入る。別に平気だもん。食べちゃえばいいんだから。ぼりぼりとチョコを噛みながら、ひたすら笑った。あぁ、楽しい。楽しいなぁ。体がふわふわ、頭がぐらぐら。ウイスキーが回ったのかもしれない。いや、ううん、たぶん関係ない。次から次へと私の前に広がるファンタジー、その光景と、甘い香りのせいだ。いつも我慢していたものが、体から出ていく感じがする。こんなに楽しいなら、バレンタインも悪くない。いや、バレンタイン最高、バレンタイン大好き。誰も邪魔しない、私だけが楽しい場所。来年も、また来年もここに来れたらいいな。
楽しいものはまだまだいっぱい。おもしろいものはまだまだたくさん。次はどれにしようかな。……。
最初のコメントを投稿しよう!