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「……これ、本命じゃね?」
俺は奴の山の中から、一番目の惹くものを指さしながら尋ねる。
「そうか? 確かに付き合ってみない?と冗談を言われたが」
「なんで冗談って分かんだよ」
「冗談だよと言われたからだ」
「……、」
本命だと思わしき物には、おかんがおとんにあげたあの箱と同じプリントがされている。本命が手作りだとは限らないから値段で判断したのだが……相変わらず女子は何を考えているのか分からない。そして、多分無頓着なこいつは値段を気にせず、一口でぱくりと平らげてしまうのだろう。だとしたら報われないのはチョコ職人の方じゃないか。
「そういうお前はハイテンションなあの2人からはもらえなかったのか?」
ハイテンションな2人というのは我が家の女性陣2名のことである。この友人は俺の母親と妹を知っている。家に呼んだ際にもれなく知り合った。
ハイテンションだったのはこいつの面が良いせいだ。どこの遺伝子が元凶なのかは知らねーが、あの2人は面食いなところが見受けられる。
世は格差社会だ。
顔面偏差値がものを言うのだ。
「ただしイケメンに限る」のだ。
「ハッ。身内からもらって何が嬉しいんだよ」
「なるほど。ねだったりはしなかったわけだな」
「あったり前じゃボケ!」
「潔くていいな」
そいつは感心するように首を数回縦に振った。
あぁ。もう後戻りできない。
仕方ねぇだろ、見栄張りたくなるのが男の性なんだから。
別に妹と母親がくれたチョコをカウントしようとしたわけじゃねぇからな。
ほんとだぞ。神には誓えないが、嘘じゃないぞ。
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