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「そうだ、『あいつ』には会ったのか?」
と、指についたチョコをペロリと舐め、俺を見ながら首を傾げる。
『あいつ』は律儀で真面目で石頭だ。こういうときは渡す人の分以上に用意するだろう。予備として。
俺はふい、と顔を背けた。
それに甘えて良いのなら、確かに1コは確実だ。
こういうと自惚れているみたいだが、でも不思議と確信できる。
『幼馴染み』というのはそういうものなのだ。
だから。
多分。
『あいつ』は俺が1つももらえていないことを分かっているだろう。
そんな相手の前におずおずと顔を出すのは、しょうもないほど情けない。
って俺が引け目を感じているのも、多分バレてる。
尚更行けるかよ。
今日という日は特に。
◇
「え?あなたの分?ないわよ」
無頓着な友人に引きずられ連れてこられた挙げ句、浴びせられたのが以上の幼馴染みの一言である。
というか、ねーのかよ!
「もらえてないでしょうけど、用意してないわよ」
そんでもって、やっぱバレてんのかよ!
「そういうお情けでもらうの嫌がるだろうと思って」
「……、」
もう、『さすが幼馴染み』の一言に尽きる。
年に数回しか話さない仲になってしまったが、疎遠になっても気まずさも感じない。
あの口の悪い妹とは違うけれど、でもこの相手も似たような立ち位置で俺を見てくれる数少ない人物だ。
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