2月14日(水)

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「それに、去年要らねーよって突き返されちゃったしね」 「え。待って、俺そんなこと言った!?」 「えぇ、言いました。言いましたとも。お恵みあげましょうか?って聞いたら、いるかボケ!って言ったのは間違いなくあなたよ」 その口の悪さは誰に似たのかしら、と幼馴染みは態とらしく首を傾げた。 疎遠になっても気まずさは感じない。その理由として挙げられるのは、彼女の表情や仕草のひとつひとつで何を思っているのか分かるからだ。逆もしかり。 なのでもちろん分かりますとも。 彼女が怒り気味だってことぐらい。 子供の頃からいっつも笑った顔をしつつ、その実怒ってるのだ。 腹を立てた女性を前に、男が出来ることはただ一つ。 「すいませんでした!」 ひたすら謝罪するのみである。俺は四の五の言わずに頭を下げた。 数秒の間沈黙が続き、先に動いたのは俺でも幼馴染みでもなかった。 「……お前が俺にくれた分、お前さえよければこいつに渡してもいいだろうか」 相変わらずチョコを抱えたままのそいつがそう言うと、間髪入れずに「いいのよ」と幼馴染みが止める。 「それに、元々私の物だったとは言え、貴方からもらうのはこいつのプライドに障るでしょうし」 俺はそのままの体勢で何も言わずに固まる。 「というか、義理ばっかり毎年集めて……その、虚しくないの?」 とどめの一撃である。根が優しいだけあり、その声色は妙に気遣うようなところがあって尚居たたまれない。 「じゃあ本命くれよ!」 俺はがばっと顔を上げた。もはや逆ギレともとれる俺の言い分に、彼女は心底訝しげな表情で眉をひそめ、心外そうに言う。 「えぇ? 私の本命が欲しいの?」 「いらねぇよ!」 「でしょう?」 私もあげたくないし、という一言が何故か胸に刺さる。 女子の親しい人物が居ない身としては、まるで女性陣を代表した俺への評価みたいだ。 俺を連れてきた無頓着な友人は、相変わらずチョコを摘まみながら呆れるように肩を竦めた。
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