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ベージュのコートに黒のタイトなパンツ。長く伸びた茶髪の若い女性。
その人は「monsieur」からたまたま出てきたところだったらしい。
バーでほろよい良い気分だっただろうに、こんな惨状を目撃してしまえばすべてが台無しだ。
僕は只々、彼女に対して申し訳ないことをしたと思った。
だけど……その人は、何も言わずに僕の背中をさすりだした。
僕はびっくりして顔を向ける。汚れた口はそのままに。
続けて差し出されたハンカチの滑らかな布地を唇にあてるたび、情けない気持ちがとめどなく湧きあがってきたことを今でもよく覚えている。
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