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バーでカシオレなんてモノを頼む僕の姿。
あの上司が見たら、「女々しい」と笑うのかな。
……いくらでも笑え。僕は基本的に、こういうお酒しか飲めないんだから。
マスターがカウンターへ戻り、しばしの“休息”が訪れる。
人付き合いの苦手加減も、ここまで来れば才能だろう。
店の壁は赤煉瓦積みで、随所にあしらわれたオーク材の内装と相まって重厚さを感じる。
巷のテラスを構えたカフェバー等とは違って古風な設えだ。
高めの天井から吊り降ろされた乳白色のペンダントライトが、ほのかな温かみを演出。
対してカウンターは間接照明がふんだんに使われ一際明るくなっていて、壁付の棚に飾られた色とりどりの瓶が光沢を放つ様が、とても幻想的だと思った。
そういった具合に店内を見回しているうち、僕はこの店を訪れた本来の目的を忘れかけていることに気がついた。
なにをやっているんだろう?僕が探しているのは“あの人”ただ一人だけだというのに。
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